研究調査ピクトリアル / 屋敷林のある風景
屋敷林は全国で認められますが、西日本に比較して東日本の方が多いようです。
屋敷林の規模は多様で、目的も同様に多様です。栃木県宇都宮市では、広葉樹の
ケヤキと針葉樹のスギが主な樹種となっています。規模が大きく、防風効果と共
に、自宅の建て替え用材も含め、用材として換金する役割も持っています(写真上左)。
宮城県大崎市の屋敷林は極めて規模が大きく、防風効果より用材としての役割
が強いようです。殆どがスギです(上右)。
岩手県一関市の屋敷林は小規模のものが多く、防風効果を主な目的としていま
す。屋敷が山地に隣接していることから、用材を得るという役割はないようです。
この暴風は、栗駒山からの颪への対応です(中左)。
秋田県にかほ市には、常緑広葉樹のタブノキだけで設えた小規模な屋敷林があ
ります。秋田県南部は対馬海流の影響もあり、タブノキが自生していることから、
屋敷林もタブノキを使用したのでしょう。その目的は景観にあり、防風効果は殆
どありません。タブノキの新緑は美しく、四季折々の色彩が地域の生活者に好ま
れたようです(中右)。
屋敷林を産業技術史として捉えた場合、最も注目されるのは平地における木材
資源です。単に持久性といった目的ではなく、スギやヒノキといった針葉樹だけ
でなく、広葉樹のケヤキも換金性を目的として植樹されています。そうした植樹
の起源は、少なくとも近世初期以前に遡ることは確かです。 (会員・石村眞一)